台風19号による長野県被害 北相木村の被害状況報告
崩壊したビニールハウスの脇で農作業を行う姿を見て、言葉になりませんでした。
「あきらめない」ということはその先が見通せてこそ成り立つと私は思うのです。
北相木村を一言でいうと・・・
北相木村は長野県の南東に位置し、群馬県との境にある秘境です。
コンビニはなく商店は1つだけ、村内に信号が1つもない、中学校もない、18時を過ぎると外灯もほとんどないので暗くて何も見えない。人口は700人程度、高齢者が多く、隣町の介護施設や病院にいる方を除けば実際はだいぶ少ない村です。
はじめに
「ハルオの孫」の代表の大森祥弘です。
私のふるさとである北相木村(長野県)は台風19号により戦後、村の歴史上最も大きいともいえる被害を受けました。
北相木村は人口700人程度と非常に小さい村です。
北相木村に限りませんが限界集落といった日本の多くの農山村の共通の問題もあり、もともと北相木村で農業を営んでいた家の子孫はほとんどが村の外に出て三大都市圏を始め、日本全国で世界で仕事をしたり生活の拠点を構えています。
私も代々、北相木村で農業を営んでいた家の孫にあたります。
農業を営んでいた母の家は祖父の代で離農し、専業農家の歴史を終えました。
そのため、孫である私も普段は東京の会社に勤務しており、北相木村には年に1回ほど何かの機会に訪れる位です。
その北相木村が先日の台風19号により、甚大な被害を受けています。
村で育った母に限らず、当然、孫の私も子供の頃は農に触れて地域に育ててもらったようなものです。とても心配でしたが、思えば北相木村に縁のある方は村の出身や子供、孫だけではありません。
北相木村は山村留学の取り組みを約30年前から行っており、北相木村での田舎暮らしに魅力を感じ、全国から親元を離れて村で集団生活を行っている子どもたちがいます。
そして、村で育ち一人一人が北相木村での思い出を胸に社会で活躍してくれています。
村の人口はわずかですが、逆に考えれば村の外には北相木村にゆかりのあるたくさんの方がいるということになります。つまり、人付き合いの濃さは違えど北相木村となにかしらの縁を持っている方は多いと推測します。
そこで、北相木村を心配する方も多いのでは?と考え、10月19日から10月22日まで予定どおり出向くことにし、微力ながら村内の状況を情報発信することにしました。
速報としてTwitterでツイートやyoutubeに動画をアップしてまいりましたが、自宅に戻りましたので当ページに地区別に撮影した写真や動画を掲載することとしました。
*村には通信事業者(docomoやauやソフトバンク)のwifiもありませんから、写真や動画をwebにアップロードする環境が整っておらず、自宅に戻ってからの作業となりました。
まだ、二次災害の危険性がある状況ですので、村内中を歩き回ったわけではなく村の主要道路である県道近くを中心に見てきましたのでご了承ください。
北相木村は長野県で1番雨が降った
東京をはじめ、長野県の外では千曲川の氾濫といってひとくくりで報道されていますが北相木村は長野県で最も雨が振りました。
北相木村は24時間で400ミリ近い雨が降りました。年間降水量が1,000ミリ程度なので、1日で1年間の40%の水を浴びたことになります。
— ハルオの孫 (@yoshihiro_omori) 2019年10月19日
村にとって過去最大の災害の結果、そのまま、あるだけで村の外にいる者の支えであった北相木村は大変な打撃を受けています。#北相木村#台風19号長野県被害 pic.twitter.com/ekv9LIM5fl
*2019/10/19 信濃毎日新聞 朝刊を撮影したものです。
北相木村は小規模ですが、過去の豪雨等で土砂崩れが起こっています。
また、相木川も川幅が小さく400ミリ/24時間の降水量を受け止めるキャパはありません。
政治家の先生が状況をTwitterで発信してくれていましたが、村道周辺だけでも被害が大きく覚悟して行くことにしました。
#台風19号 #長野県 #北相木村。写真は昨日。この村には技術職職員がいないので、復旧を県や国にお願いする際に、設計を民間に外注とのこと。長野県のみならず全国的に大きな被害が出て、技術職がいる市町村でも外注でいっぱいになるだろうから、提出期限などを柔軟対応してほしいとの声。 pic.twitter.com/9xhBuKCuVQ
— 井出ようせい (@yousei_ide) October 14, 2019
#台風19号 #長野県 #北相木村。この時間になっても、濁流。道路の崩壊、停電など広範。山間地のため川沿の平地でも農業をしているが、被害甚大。 pic.twitter.com/UAXtxHenRs
— 井出ようせい (@yousei_ide) October 13, 2019
北相木村への道
台風19号の襲来から1週間経っていましたが、北陸新幹線は臨時ダイヤでの運行、関越道は碓氷軽井沢インターチェンジから佐久インターチェンジ間が通行止め、中央道は八王子ジャンクションから大月インターチェンジ間が通行止めということで東京から佐久平まで北陸新幹線で向かい、佐久平でレンタカーを借りて北相木村へ向かいました(当初の予定どおりですが・・・)。
佐久平から小海の途中の県道沿いが崩落していたため、佐久中佐都ICから八千穂高原ICまでのバイパス(無料区間)を進みました。
八千穂高原ICを抜けると、小海町まであっという間でした。
(小海町からは新幹線通勤できるような気がしました)。
小海町周辺
小海町に入り、最初に直売所が事前にツイートしてくれていた佐久病院小海分院付近を確認することにしました。
小海町直売所の裏手です。
— 小海町直売所(プチマルシェこうみ) (@koumityokubaijo) October 18, 2019
ここには駐車場がありました。
現在は川になっています。
そしていまの雨でまた水位が… pic.twitter.com/YIv1qxq181
*小海町直売所のツイートからお借りしました。
まだ川に勢いがあります。佐久病院の小海分院裏は千曲川の増水が想像できる位の状況でした。
橋の支柱に流木が引っかっています。当時の名残がまだ残ります。#小海町#台風19号長野県被害 pic.twitter.com/DGSjphncLp
— ハルオの孫(大森祥弘) (@yoshihiro_omori) October 19, 2019
北相木村
台風19号による災害が起こるまで、全く考えたことがありませんでしたが北相木村は南相木村に比べて川幅が狭く、傾斜があるため水の勢いが強くなるように思えました。
農産物直売所周辺
この直売所は南相木村との分岐を過ぎたところにあります。かつて、東京電力の工事に従事する方たちの宿泊所として建設されたものを活用したものです。
ここは非常に安く北相木村で収穫された農産物が販売されていました。北相木村や南相木村は松茸の産地でもあり破格で松茸を販売していたこともあります。
「閉店」の表現が非常に残念であり、無事なようですが相木川側から見ると、閉店やむなしという状況でした。
”閉店”というのが無念ですね。超破格で北相木村産の松茸が買えるスポットだったのですが・・・
吊り下がっているのはエアコンの室外機です。苦しそうなので、取り外したいですが建物の下までえぐられており、危険です。この建物は使えないかもしれません。
こういった大きな岩石が流れてきたのですから、これまでの北相木村を襲った天災のレベルを大きく超えています。
奥のビニールハウスが潰れています。ビニールハウスのところまで川の水位が上がったということは道ギリギリまで増水したと考えられます。
ビニールハウスを1つ建てるにもコストは大きく、農家さんが自費で再建できるかもしれませんが問題は土です。川の水が入ってしまいましたから、土の質を戻すのに苦労されると想像できます。
通岩~南相木村との分岐
相木川沿いに村道が走っており、小さな橋も多いエリアです。
橋は落ちたり、損傷はパッと見てわかりませんがだからといって安全かというと怪しいですね。専門家の方による点検が取り急ぎ必要だと感じられました。
流木も引っかかっており、橋と道路の繋ぎ目が損傷しているかもしれません。
ここは畑だったようですが、めちゃくちゃな状態です。
通岩付近には全壊している小屋もあります。アンテナが付いていますので、人が住んでいたかもしれません。土も柔らかかったので遠くから撮影しました。
宮の平
県道や周辺の家屋は無事です。しかし、相木川沿いの畑は宮の平に限った話ではありませんが被害を受けました。護岸が粉砕されており、畑に水が入ってしまったようです(堤防の結界のようなものと推測できます)。
畑の中の道も途中で途切れてめちゃくちゃな状態です。
めちゃくちゃです。小屋のあたりまで増水したと推測できます。
ギリギリ被害をまぬがれた畑も確認できます。
畑に繋がる橋です。大きく損壊しています。
台風の際には橋が水に浸かったと推測されます。
護岸が崩れ、
コンクリートが浮いている箇所もあります。
道を役場の方に進んでいくと、数年前に南相木村へ橋がかかったのですが大きく損壊しています。まだ、それ程古い橋でもないので、全く想定外のレベルの河川の氾濫だったと想定できます。
橋の下を拡大したものです。
橋の近くにはビニールハウスがあります。
立派なハウスなので復旧にはかなりの費用が必要です。
宮の平の入り口です。親沢峠方面、グリーンドームへ繋がる道を進みました。
沢がありますので、心配でしたが木が伐採されていました。
おかげで土砂崩れが起こらず、沢の氾濫を防げたようです。
(ここが土砂崩れになってしまうと、子どもたちがいる山村留学センターとの道が分断されてしまいます)。
確かに保安林です。役目を果たしてくれました。
久保
川を挟んで、県道より低い土地に家が建っています。床上浸水の被害にあったようです。この高さまでよく水が来たなと思います。
坂上
坂上という名前は間違いないかもしれません。村内で一番被害が少ない地域と思われます(畑の方には行きませんでしたのであくまで県道周辺ですが)。
変わらない郵便局です。
この眺めも変わりません。
これも
おそらく、30数年前と変わりません。
祖父の軽トラに乗ってたまに行った店です。
まだ営業しているみたいで、せっかくなので入ればよかったですね(どこの誰状態かと思いますが)。
この眺めも文化財ものだと思うのですが・・(50年前位から変わっていないといった声も聞きます)。
役場裏
役場の裏の駐車場ギリギリまで増水したと思われます。
思えば、役場の場所も考えたほうが良いかもしれません。もはや村の中枢ですが、川沿いです。
写真に映っている建物は役場の隣りにある北相木村考古博物館です。
小海町の八峰の湯に行ったら、イベントを計画していたようです。
大変残念ですが、落ち着いた頃に復活してもらいたいと思います。
山口
相木川の上流へ向かうに連れ、被害が目立ってきます。
山口公民館近くの道はなぜこうなったのかよくわからないのですが、地面が隆起しています。夜は損傷している道路が目視しづらいので、要注意です。
まさかこんなことになる日が来るとは・・・
パンクしないようにゆっくり走行しました。村の人が応急処理をしてくれたのだと思われます。動ける人は少ないと思われますが、感謝です。
白岩に向かう途中だと思うのですが、土砂崩れが起こったようです。
応急手当真っ只中でした。
引き返そうか悩みましたが進むことにしました。
どこにこんなに木があったのかという位、流木の残骸が残っています。
白岩
工事現場のようですが、村の中です。
パッと見て、どこだかわかりません(白岩でなかったらすいません)。
二次災害要注意です。
川沿いでなくとも、ところどころで道路が損傷しています。
夜は照明等で照らしたほうが良いと思いますが、まだそこまでの余裕はなさそうという状況です。
小規模な土砂崩れはところどころで見られました。
遠くに助かった畑が見えます。
この岩はどこから流れてきたのか・・・
三寸木の写真が一部、混ざっていると思われますが村の奥はあまり馴染みがないのでごっちゃまぜになってしまったかもしれません。
とにかく被害が大きいのは役場の先です。視察に来る議員先生方は是非、役場で引き合えさずに役場の奥を見てほしいと思います。
南相木村
南相木村の写真も撮影しましたので、一部、掲載します。
ひどいところは北相木に負けず損傷が大きいです。
編集後記
北相木村は戦後、最も大きな天災の被害にあったといっても過言ではありません。
もともとマイナーな村ですし、北陸新幹線で長野駅か佐久平駅で降りて長野市や佐久市の被害を報道すれば「被災状況を報道する」という仕事は終わりますのでメディアが北相木村や南相木村、隣町の小海町や南牧村へ入るということもありません。
しかし、注目されないからという理由で「小さい村だから大きな佐久市や長野市が優先で、北相木村は数年後になる」といったいわば経済的合理性を理由にあきらめてはいけません。
村外の者で何ができるのか、このページを見ていただいた方は是非、考えて頂ければ幸いです。
北相木村では、義援金の受付を開始したようですので掲載します。
ふるさと納税に関しては以下のリンクをご覧ください。
悲惨な状況でしたが、祖父の家の近くから見えた御座山には日が差し込み、これまで見た中で一番雄大な姿でした。言葉にできませんが何かを示してくれたようでした。